前回のご報告から約2か月。
学生さんと表具師による意匠打合せを経て、
作品を預かった表具師は、各々どのような掛軸に仕立てるか、
イメージを膨らませました。
その上で、2月下旬には、
表装材料や道具を販売するマスミ東京さんにて、
イメージに合う裂地の購入をしました。
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ここからは、実際に掛軸に仕立てていく作業。
3月の表粋会では、
作品(本紙)の裏打ちが行われました。
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掛軸に仕立てる際、本紙の最初の裏打ちは、
肌裏打ち(はだうらうち)と言います。
紙は美濃紙、糊は正麩糊を使います。
美濃紙は強度がありつつ、薄くしなやか、
正麩糊は接着力はありますが、
水気を加えると綺麗に剥がすことができるため、
修復を見越した仕立てには欠かせない糊です。
そんな正麩糊を、何度も丁寧に漉して
粒子を細かくします。
そこに水を加え、適度な濃さになったら、
裏打ち用の糊の完成です。
美濃紙に丁寧に均等に糊を付けます。
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続いて、本紙に霧を吹いて湿り気を加え、
皺やたるみを伸ばします。
本紙がぴたっと平らになったら、
裏打ちです。
写真からもお分かりになります通り、
表粋会で作業する場合、
常に多くの視線を浴びながらの作業になります。
表具の作業の仕方は、十人十色で、様々なやり方があります。
本紙によっては、絵具が剥落しそうだとか、糊が接着しにくそう、
水気を加えてもシワがよりそう、などなど、
様々な難所があります。
他の人がそれに対してどのような工夫をしているのか
観察することで、新たな気づきがあります。
また、各々が持つ経験談や、失敗談も
共有されるため、状況に応じて、
どのようなやり方が最適か判断することができます。
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「日本画」「軸画」と一言にいっても、
未来展の場合、今まで全く日本画を描いたことが無い学生さんや
様々な国籍・バックグラウンドを持った画家さんが
各々の得意とする技術で画を描いています。
そのような中にあって、
旧来の表具業界のように、
師匠・弟子の間でのみ技術を継承するというスタイルでは
限界があると感じています。
表粋会では、お店の垣根を超えて、
所属表具師が技術・経験を共有することで、
それまでできなかった表具を実現できるよう
取り組んでいます。
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本紙の肌裏打ちの次は、増裏打ち(ましうらうち)へと続いていきます。
さらに使用する裂地の裏打ちもしていきます。
引き続き4月・5月と作業をしてまいりますので、ご期待ください。
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